ド迫力の石見神楽を体感

 

日本の伝承芸能と言えば、狂言や歌舞伎、能などを思い出す人が多いかもしれませんね。「神楽(かぐら)」は、かつては日本全国で盛んに行われていた日本で最も古い芸能です。

 

その歴史は、日本神話の中の「天岩戸伝説(あまのいわとでんせつ)」までさかのぼり、岩戸にお隠れになった天照大神(アマテラスオオミカミ)を誘い出すために、宇津女命(うづめのみこと)が岩戸の前で舞った踊りが起源だと言われています。

 

 

神楽の演目は、古事記や日本書紀を原典とするものなどをはじめ、30種類ほどあります。特に、石見神楽は「神事」でありながらも、「演芸」的な要素が濃いので、舞もお囃子(はやし)も激しく、演者の衣装がとても艶やかで、エンターテイメント性が高いのが特長です。演目の物語を知らなくても、ストーリーが明解なので、自然と楽しむことができるでしょう。

 

今回は、石見地方の有福温泉にて石見神楽を見学…。とても迫力ある舞と、ノリの良い生演奏のお囃子に心躍らされて、神話の世界を体感することができました。

 

只今、島根県全域がパワースポット…神社はもちろんのこと、至る所で「神在月」の神事が行われています。出雲大社の神楽殿での神事、官職による儀式舞「厳かな神楽」なども、粛々と行われていたりします。

 

あるいは、集落ごとに行う収穫祭の神事、神社や集会所などで、地元神社の氏子さんたちによる神楽も行われています。こちらでは、地元の神社ならではの演者と客席との掛け合いや、神楽を見ながらお酒を交わす宴も見受けられます。実は、地元のお祭りでは、多くの知り合い、友人たちも神楽を舞っていたり、お囃子隊にいたりします(笑)。

 

来年の島根ネイチャーツアープログラムに、島根での神楽体験も入れてみようかなと思考中です。

 

ちなみに、有福温泉にて鑑賞した演目は以下の通りです。

 

★「道返し(ちがえし)」

 

常陸の国に住むタケミカヅチノミコトが、他国から攻めて来た大悪鬼(だいあっき)との戦いで勝利する物語。鬼は征伐されるのが通常の展開なのですが、この演目では、鬼は許され改心し、九州の高千穂の峰で暮らすという優しいストーリー。

 

とにかく、大悪鬼のお面が大迫力でとても怖い…。実際には出会いたくないけれど、最後に大悪鬼は改心して、人間になる!?…。大悪鬼のお面を外した演者さんのお顔が、若くてイケメンだったことに、すごーく感激…。思わず、素敵~って叫びそうになったのを我慢しました。30分ほどの激しい舞は、体力勝負…。時折、台詞もあるので目の前で見ると、ド迫力で凄かったです。

 

★「恵比寿(えびす)」

 

出雲の国、美保神社の御祭神である恵比寿様(=コトシロヌシノミコト)が磯辺で釣りををしているお姿を舞ったものです。恵比寿様は、大国主命(オオクニヌシノミコト)の1番目のご子息です。昔から漁業、商業の神様として崇められてきました。

 

今回の演者は、小学5年生の男の子。小さな恵比寿様が舞台に現れたので、可愛すぎて自然と目尻が下がりました。演舞中でのコミカルな仕草や、釣りをする表現の幅広さに感心…。鯛釣りの前に、撒き餌にみたてて、福飴を小さな恵比寿様が客席に撒いてくださいました。思いがけないお福分けに感動…心が温まりました。

 

ここでは、子ども神楽も盛んに行われているとのこと。

 

小学生ながら大人顔負けの舞のすごさに脱帽…。将来のスター性がはっきり見えました。

身近に神楽と触れる環境があるので、自然と神楽に感心が向くのでしょう。

大人が神楽で演じる姿は、子どもにとって憧れるヒーロー的な存在かもしれません。

歴史ある伝承芸能を受け継ぐ体制が、生活環境の中にしっかりと根づいていました。

 

★「大蛇(おろち)」

 

姉である天照大神から高天原を追放をされた須佐之男命(スサノオノミコト)が、出雲の国 斐の川(斐伊川)で、大蛇にさらわれそうになっている老夫婦の娘(稲田姫)を救った後に夫婦になる物語。須佐之男命は老夫婦に毒酒を作らせ、それを大蛇に飲ませて酔いつぶれたところを退治する。

 

3匹の大蛇の舞が見物ですが、とにかく舞台と客席が近いので、大蛇の迫り来るド迫力に思わず後ずさり…。大蛇の頭が切られて客席へ…持ってみると、すごく重いのでビックリ。この重い頭を付けて演舞するのは至難の業でしょう。とにかく、はじめて体感したド迫力の神楽に感動しつつも、しばらく放心状態に陥るのでした(笑)