奥出雲 囲炉裏の古民家体験


今回の古民家宿泊は、昨年に出雲支部長がお世話になった「ふるさとつなぎツアー」でご縁ができた「田樂荘(だらくそう)」でした。


こちらは島根県仁多郡奥出雲にあり、奥出雲は日本昔ばなしに出てくるような、懐かしい藁葺き屋根の家やのどかな田園風景が目立ちます。


そんな素敵なロケーションで車を走らせていると、道路脇の木々の茂みに隠された、1軒の古民家が見えてきます。



こちらの古民家のオーナーさんは、9年前に千葉からIターンを果たした白山さんご夫婦です。今回は白山さんご夫婦との親睦を深めながら、田舎暮らしについて貴重なお話を聞くことができました。


まず、こちらで宿泊体験して驚いたことは、この真夏の暑い時期に囲炉裏の火を囲むこと…。


築300年にも及ぶ古民家には、冷房も暖房もありません。


1年中囲炉裏の炭に火をつけ、外出時でも種火を消すことはなく、夏でもこの炭火で食事の支度をしているということが、とても不思議でした。


昔の人の知恵は凄いにつきますが、夏場でもこの囲炉裏の炭に火を入れることで、家全体が煙で燻されます。丁度、薫製を作るスモークマシーンの中に自分が入っているような状態です。


この囲炉裏から出る煙が、家全体をコーティングしているので、扉や窓を開けていても虫除けになるそうです。囲炉裏に火が入ることで、外気が家の中に取り込まれ、家の中の煙の逃げ道も藁葺きの天井と壁の一部に確保されているので、家の中に空気の流れができ、夏場でも意外に快適に過ごすことができます。土間は生きていて、常に呼吸しているので室温の調整に役立っているそうです。


このシステムが、約300年もの前から出来ていたと思うと、本当に先人の知恵は素晴らしいですね。


この素晴らしい古民家とのご縁を結んだ白山さんご夫婦は、現在では「奥出雲オーガニックコットンプロジェクト」に参加して、この地で無農薬で育てたコットンを、全国の人に広める活動をされています。奥出雲に移り住むまでは、都会で長年お仕事をされていたことから、人が生きていく中で本当に大切なものが何であるのか、その本質に気づくことができたのだそうです。


人が生きるために必要な心と体のバランスは、古来からの古き良き日本の暮らしの中にあると確信して、その生活を継承していきたいという強い決意から、奥出雲で無農薬の農業を始められたと言うお話に、とても感銘しました。


私も昨年から、島根と東京を行き交う生活の中での、田舎暮らしの良さや厳しさを体験しています。そして、都会での利便性の良さを感じながら、騒音や公害、夜間の光害、電磁波などの弊害を感じる環境の中で生活しています。私が都会と田舎の二地域生活を経験しているからこそ、白山さんが世の中の見えにくい真実を語られるので、とても感慨深いものがありました。


白山さんは、先人が残してくれた生きる知恵や技を軽んじてはいけないことを、ご自身の体験を通して教えてくださいました。


今の世の中、経済成長や利便性だけを追い続け、どれだけの環境を破壊してきたことでしょう。


私たちが犯してきた自然破壊は、大気や大地を不健康にしてしまいました。少しでも残された自然(自然の湧き水や澄んだ空気、土壌、海、山など)を、これから将来を担う子供たちのために、健全な状態で保全していけるよう行動していきたいと思っています。


今回の古民家体験で、世の中の捉え方が大きくかわり、現代の日本人が失ってしまった生きる知恵を学ぶことができました。貴重な体験をさせて頂き、白山さんご夫妻に心から感謝です。