チョウチョとお月さま⑦

つぎの満月の夜、ルンちゃんは、
約束をしたチョウチョと一緒に池のほとりに行きました。
ふたりで美味しいヤマユリの蜜をいっぱい飲みました。
そのあと、相手のチョウチョがにっこり笑っていいました。
「ぼくのこと、おぼえてる?」
そのとき、ルンちゃんは、はっとして幼虫のころを思い出しました。
「あなたが、あのとき、わたしに葉っぱをわけてくれたのね。」
「そうだよ。ぼくは、チョウチョになってから、
森の中で、ずっときみを探していたんだよ。
そして、ぼくが思っていたとおり、ルンちゃんは、とても思いやりのある、
やさしいチョウチョになっていたね。だから、ぼくと結婚しよう。」
とそのチョウチョはいいました。
ルンちゃんは、とても幸せなきもちになりました。
そして、ふたりはそこで結婚しました。

しばらくして、ルンちゃんが池のほとりを見わたすと、
このあいだ森で声をかけたチョウチョたちが、
それぞれパートナーをつれて、池のほとりへやってきていました。
そして、みんな幸せそうに仲良くヤマユリの蜜を飲んでいました。
「お月さま、なんだかみんなが幸せそうで、
わたしもとってもうれしい。いろんなチョウチョたちに、
声をかけたもの無駄ではなかったんですもの。」
ルンちゃんは、うれしそうにお月さまにいいました。
すると、お月さまも、微笑みながら、
「ルンちゃん、結婚おめでとう。
また、本当に大切なことに気づいたみたいね。
とってもすばらしいことだわ。」といいました。

しばらくのあいだ、ルンちゃんは、とても幸せな日々をすごしました。
やがて、ある新月の夜に、
ルンちゃんは「次の満月までに、じょうぶな卵を産む場所を探そう。」
と心にきめました。ルンちゃんは、その場所を慎重にえらびました。
自分がこの世からいなくなっても、
生まれてきた幼虫たちが、すぐに、美味しい葉っぱが食べられて、
お月さまともお話ができるような場所をえらびました。
とうとう満月の夜がやってきました。
ルンちゃんは、お月さまがよく見える、
いいにおいのするミカンの葉っぱの上で、かわいい卵を産みました。
そして、ルンちゃんは、お月さまに見守られながら、天国へ旅立ちました。
(おしまい)