チョウチョとお月さま⑥

つぎの満月の夜、ルンちゃんは、
たくさんのチョウチョが集まっている池のほとりにいきました。
ルンちゃんは、そこで素敵なチョウチョを見つけると、
勇気を出して「こんばんは」と声をかけました。
けれど、誰も相手にしてくれません。
みんな、ヤマユリの蜜を飲むのに一生懸命で、
ほかのチョウチョのことなどおかまいなしなのです。
結局、ルンちゃんは、ひとりぼっちでヤマユリの蜜を飲んで、
しょんぼりした顔で、森へかえってきました。
すると、お月さまが、
「ルンちゃん、よくがんばったわね。
まだまだ、結婚相手を探すチャンスはあるのだから、
気を落とさないようにね。焦らないで。」
と励ましてくれました。

つぎの新月の夜、ルンちゃんは、
結婚相手をみつけることができなかった原因について、
ゆっくり考えてみました。幼虫だったころのこともいろいろ思い出しました。
そして、お月さまに、
「お月さま、いつもわたしを励ましてくれてありがとう。
わたしも、あれから、いろいろと考えてみたの。
池のほとりにいたみんなに声をかけるのではなくて、
池のほとりに行ったことのないチョウチョたちに、
いっしょに、あの美味しい蜜を飲みに行こうって、
誘うのがいいんじゃないかしらと思ったの。
自分のことだけじゃなくて、
みんなが幸せになることを考えなければって
思ったの。」といいました。
お月さまは、
「ルンちゃんは、とっても素敵なことに気づいたようね。
今回のことも無駄じゃなかったみたいね。
その考えは、すごく大切だとおもうわ。
がんばってね、ルンちゃん!」といいました。
ルンちゃんも笑顔で、うなづきました。そして、
「つぎの満月までに、いっしょに池のほとりに行ってくれる相手を探そう。」
と決心しました。

それから、満月までの間、
ルンちゃんは、森にいるチョウチョたちに、笑顔で声をかけました。
「池のほとりに、とってもきれいなヤマユリの花が、
いっぱい咲いているのだけれど、今度の満月に、一緒に行きませんか?」
ルンちゃんは、何匹ものチョウチョにふられても、
あきらめずに、声をかけつづけました。
すると、とうとう一緒に行ってくれる相手が、あらわれたのです。